【こちらの記事は2020年10月現在のものです。
金利、ローンについては最新の情報を把握し、利用してください。】
残価設定型ローン、と聞くと車を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
もっと具体的に言えば、「新車に半額で乗れる!」というキャッチコピーで宣伝されているので、耳にした方も多いはず。新車を販売するときに利用されるこの「残価設定型ローン」を住宅業界への普及へ向け、国土交通省が2021年度にも民間の金融機関が参加するモデル事業を開始することが決まりました。
具体的にどんな仕組み??
残価設定ローンは、【借入額】と【将来の価値の差額のみを返す】仕組みです。
もっと言えば、【将来の住宅の残価(将来の価値)】をあらかじめ設定し、住宅価格から差し引いた額を分割し、返済していきます。
仮に借り入れを2000万円とし、【将来の住宅の残価】を500万とすると、残りの1500万円に利子を加えた金額を、数年に渡って分割して返済していく、という仕組み。
じゃあ、ローンの満期を迎えたらどうなるの?家売らなきゃならないの?という疑問が当然浮かびますが、満期後の選択肢には複数あって、
- ①残価で住宅を買い取る(将来の住宅の残価で購入)
- ②再度ローンを組む(将来の住宅の残価を再度ローンで支払っていく)
- ③家を売却する
といった、3パターン取ることが出来ます。
家は残価で買い取ってもらうこともでき、売却すればローンは完済となります。
残価設定型のローンのメリットってなに?
ん?残価設定することのメリットってなに?って思いますよね。
この残価設定ローンを利用することの最大のメリットは「毎月の返済額を低く抑えられる」ことにあるんです。
月々のローン支払い金額を抑えられることで、ライフスタイルに応じて変化していく支出のバランスに、柔軟に対応していくだけのゆとりを生ませることが出来ます。
子どもの進学、急な病気やケガ、やむを得ない引っ越しなど……
人生における全てのリスクを想定することは不可能です。そこに自身の持つマイホームをもって月々の負担を下げることで、住宅取得のハードルを下げ、マイホーム取得を促していこう、というのがこのローンの狙いであり、私たちのメリットです。
ここだけは押さえておきたい注意点!
このローン、なによりもまず注意しておかなければならいのは、ズバリ、「まだこれからのお話」だということ。
実はこのローン、既に新生銀行が取り扱っていますが、まだまだ普及はしていません。
普及していないのも当然理由があり、大前提となる住まいの「買取保証額(=将来の住宅の残価(将来の価値))をどうやって決めるのか、という点について更なる議論と決定が必要です。
そもそも、日本の場合、諸外国と違って「建築から30年経つと住宅の資産価値がほぼゼロになる」と言われています。住宅メーカー各社が30年の住宅を対象に建て替えをおススメするように、日本の強烈な風雨と湿度、そして地震にさらされる環境下では、他の国と比較して住宅へのダメージも大きく、寿命も短いのです。
もちろん、天候以外にも建築基準法の改正により住宅の安全性能ハードルが上がっているなど理由はあり、住宅会社各社もスクラップ&ビルドの体質を変えようと長寿命化住宅に取り組んでいることもあり、必ずしも30年でダメになる、というわけではありませんが……30年で資産価値がほぼゼロになるのでは、残価設定ローンもなにも無くなってしまいます。
ただし、先に挙げたように長寿命化住宅の建築と、住宅性能の高いマイホームを取得することで、30年後の資産価値を上げることは出来ます。残価設定型住宅ローンの普及は、諸外国の様に30年以上持ち、諸外国以上の性能を持った住宅の普及という側面も持っています。
また、長寿命の住宅が増えていくことで、中古住宅の市場も賑わっていくでしょう。欧米では中古住宅の流通シェアは7~8割強に達する国もありますが、日本は10%台半ばの水準に留まっています。新築のみを取得するに留まらず、中古住宅を取得してリフォームしていく、という選択肢もよりありふれたものになっていくかもしれません。